とうとう退院の日を迎えた。
この7日間、一歩も病院の外には出ておらず、外気にもふれていない。
いつも病室の窓から晴れていたり、雨だったり、風が吹いていたりする
外の景色だけを見てきた。
生後2日目から24時間の母子同室をずっと続けているので、
先程「りょう」ちゃんは今朝何度目かの眠りに落ちていった。
そのつかの間、窓辺の椅子に座って暑くなりそうな気配の外を眺めながら、
あっという間だった7日間の事を想い返していた。
ふと口をついて出てきたのは、いつも隅田川を散歩する時に口ずさんでいた
古いユーミンの歌だった。
日傘をさし 土手を歩く 白い小さな イリューション
目を細めて 追いかけたの 夏をひきとめたくて
ふとあなたの声が 去年の恋が
歌いながら 光りながら 耳をかすめた
ペダルをこいで並んだなら しばらくそばにいて
やがて雲は ちぎれながら 空色を深め
透きとおった心からの 葉書が出せる気がする
まだ あなたの声に 去年の恋に
立ち止まって 涙ぐんで 季節を知るの
そんなこよみをありがとうと いつしか伝えたい
ふとあなたの声が 去年の恋が
歌いながら 光りながら 耳をかすめた
ペダルをこいで並んだなら しばらくそばにいて
あなたの声に 去年の恋に
立ち止まって 涙ぐんで 季節を知るの
そんなこよみをありがとうと いつしか伝えたい
♪松任谷由実 「残暑」
もちろんこれは恋愛の要素の深い歌ではあるが、
この「残暑」の季節に「りょう」ちゃんが生まれてきてくれた事は、
一生忘れられない気がする。
出産から今日まで、あれよあれよと毎日が慌しく過ぎて行き
ゆっくりと物を考える時間が無かったのだが、
今日改めて沸々と何か込上げてくるものがあり
一人病室で涙をぬぐった。
